戦争はそのうち一度はゲームになるのではないか?

小説家になろう」で連載していた長編小説が完結した。

 

レミングの法則

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 以下、執筆に際し考えていたテーマのひとつを、同サイトの「活動報告」に記載したので、こちらにも転記。

 

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 ようやく、全50話で完結しました。描き始めてから4か月。最初は1か月くらいで上がるつもりだったのですが、自分の見込みの何たる甘いことか……まぁ終わってみれば、少し寂しくもありますが、とりあえず一旦は終了です。

 

 実は以前からずっと考えていたことがあって、それは
「戦争はそのうち一度はゲームになるのではないか?」
 というテーマ。

 

 昨今、急速に兵器の自動化や無人化が進んでいて、近い将来の戦場では、コンピュータとロボットがその主役の座から人間を引きずり降ろすことは明白です。ですが自動化された兵器は更にそのコストが嵩み、そのうち
「兵器自体がバーチャルになるのではないか?」
 というのがその意味です。

 

 その「ゲームになった戦争」では、いわゆるeスポーツのようなものを思い浮かべて頂ければ分かりやすいと思うのですが、サーバを各国(国連等)で共有管理して、選ばれた戦士がバーチャルで戦闘を行うのです。

 

 で例えば、現在だとウクライナ辺りが大変きな臭いと報道されている訳ですが、ロシアが実体としての戦力をクリミアに投射する替わりに、ロシア軍とウクライナ軍の代表者が APEX のような戦場で勝敗をつける、みたいな未来……だって、VRゴーグルをつけて後方でコントローラを操作するのであれば、もう実際に兵器を作って互いにそれを壊す必要なんかないではないか、と……そもそも、エコじゃないし、それって……

 

 そして、例えば「そのゲームの勝者がクリミア半島を領土化できる」なんて言ったら妄言と言われるでしょうか? しかし、無人化された戦争とゲームの戦争と、一体何が違うのでしょう?

 

 兵力の大小はゲーム内課金の多寡で実現すればいいし、ブロックチェーン的な技術で透明性・履歴性を確保した上で兵器開発すらバーチャルに行ったらいいし、つまりは国力の差だってバーチャルに実現可能な訳です。地政学的なことを言うのであれば、そもそも戦場を地球の地理と同じ設定にしてしまえばよい。そして何よりゲームのルールは国連(国際法?)が管理すればいいのです。VRゴーグル無人化兵器を操作する「現実の戦争」とVRゴーグルアバターを操作する「ゲームの戦争」、一体何が違うと言うのでしょうか? えっ、「ゲームルールの管理が公平に行われない可能性がある」ですって? 何を言っているのでしょう。そんなの、今と同じではないですか!

 

 で、「人道」とか宣わって「兵が死なない戦争」が一度は実用化されて、それで実際に戦争が起こって、そしたら負けた方が「我が国はまだ敗けていない」とか言って、やっぱり最後は実体兵器を持ち出してリアルウォーに突入する……そんな未来を人類史が描くのではないか、というのが、冒頭に掲げた私のテーマです。
「戦争はそのうち一度はゲームになるのではないか?」

 

 こういうことをずっと考えていたことの一つの解を、最終話でフレミーに語らせてみました。
「それじゃぁまるで、中世の戦争だわ」
 そう。ゲームの戦争って、実は既に現実に起きていたことなのでした。チェスとAPEXと、一体何が違うというのでしょう? そして、中世封建領主はチェスで決着をつけることができましたが、国民国家・民主国家ではきっと……それができるくらいなら、きっととっくに外交で決着をつけられていると思うのです。それができないから、換言すれば、国民がそれを許さないから、戦争が起こるのです。現代では……

 

 そう考えると「戦争は悪だ」と単純に言う人の考えが分からなくなります。民主国家において戦争は、民衆の選択結果なのです。いや、「戦争は絶対悪」で、「(それを避けるために)独裁制が望ましい」という主張なら100歩譲って理解の余地がありますが、「民主主義万歳!」と叫んだ同じ口が「戦争反対!」と叫ぶのは、思考が足りていないのではないか、と思わないでもないのです。

 

 でやっぱり、「人が死ぬから戦争は悪」というテーゼが成り立つ上では戦争の無人化はあり得ない、というのが本論の帰結なのです。トートロジーかしら、これ? まぁ、そうは言ってもロジックと現実の間には100万光年の開きがあることは、私も理解しています。だから、フレミーをチアノーゼにさせながら、それでも彼女に訴えさせてみました。
「戦争って、人の行いそのものだから……」

 

 戦争を美化するつもりはないのですが、残念ながら私には、戦争を無くす方法が思い浮かびません。
「誰も死なない戦争で、自国の敗けを認めることはできますか?」
 この問いに、全ての人が「是」と答えられない限り、戦争は無くならないのですから。えっ、私ですか? 今のところ「是」とは答えられません。ごめんなさい。

 仕方が無いのであの方の台詞で本論を締めたいと思います。
「悲しいけどこれ、戦争なのよね」
 そういう台詞がこの世から無くなることは……恐らくないのでしょう。悲しいけど、これ。

 

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