文書

小室圭氏が、28Pにも及ぶ文書を公開した由。

 

彼はきっと実務経験が少ないのでしょう。あぁ、法律事務所で働いていたらしいので、実務経験が無いとは言いません。ただ、裁判所で争うのであれば、ち密に、論理破綻なく、MECEに、文書を作成することは正しいのでしょうし、彼はそのカルチャーで育ったのでしょう。でも、ひとつ疑問。この文書は一体誰宛?

 

筆者であれば、まず最初に理解してもらうべきお相手は皇嗣殿下であると考えるであろう。そして、まさか殿下に28Pの文書を熟読して頂こうとは考えないであろうから、もっと端的にまとめるであろう。

 

次にもし、マスコミに理解してもらおうと思うのであれば、まぁA3用紙で図解にして、とかの方が受けがよかったように感じるし、筆者であればそのような資料を作成すると思う。あとは例えば注釈にリンクを貼るとか?

 

「何故今まで説明してこなかった」「何故解決してこなかった」という世間の疑問に対する反論として、小室氏側の立場に立てば筋の通った主張なのだろうけれど、残念ながら一般的には「長々と言い訳をしている」程度にしか取られないであろう文書の公開が、彼の目的(内親王殿下との結婚?良く分からないけれど)を達成するのに合致しているのであろうか。

 

そう、例えばもう少し、皇室に敬意を抱いていることを伝えるような文面が散りばめられていたら多少は良かったかもしれない。例えば「相手の方と単純に金銭で解決することが後々皇室にご迷惑をおかけする懸念があった」とか?自分のことだけ主張するのではなく、自分のかつての言動は周囲の利害にも適っている、という視点を付け加えた方が、多少は味方が増えたのではなかろうか。まぁ、「どの口でモノを言ってるんだ」という反論も集まりそうなところではあるけれど...

 

また、企業法務とは裁判所での争いだけではないはず。というかむしろ、裁判沙汰にならないように調整するのが顧問弁護士に与えられた重要な役割であろう。だって、裁判になれば時間も費用もかかってその間収益を得ることが叶わないばかりか、場合によっては「裁判沙汰」というだけで企業評価は下がるのである。独禁法違反の疑いで係争になったというだけでGoogleの株価が下がり、裁判所がGoogle有利の判決を下せば上がるのである。これなぞ「裁判沙汰」の企業評価に与える影響は洋の東西を問わない一例であろう。

 

ということは企業の顧問弁護士にとって法廷闘争スキル以上に重要なスキルは「クライアント企業に理解してもらう」スキル(これ一番重要かも)、「相手方に能く説明する」スキル、と「妥当な落としどころを見つけて落とし込む」スキル辺りであろう。小室氏の場合であれば「クライアント=皇嗣殿下、一般国民」「相手方=母上の元婚約者、マスコミ」「落としどころ=内親王殿下との結婚」に対比可能であるが、どれひとつとって充分なスキルを発揮できていない。筆者が小室氏に対して「実務経験が少ない」と評する所以である。

 

そしてタイミング。狙ったのか偶然なのかは知る由もないが、皇位継承に関する有識者会議の初会合が開催された正に当日における突然の文書公開。狙ったにしろそうでないにしろ、「内親王殿下との結婚」という目的を果たすにはとても好都合とは言えないであろう。強いて言えば「メディアの注目を集める」点においてはベストタイミングであろうが...狙ったのであれば自己中心的に過ぎるし、そうでないなら情報収集能力に疑問符が付くか、あるいは「持ってない」のか。

 

筆者などは以前から「本当は小室氏には結婚する意思など無いのではないか」との疑念を拭い去れていないのであるが、文書の内容と言いタイミングと言い、自分のことしか考えていないようにしか見えないではないか。そして、「そんな方と一緒になっては内親王殿下は...」とか「皇室の歴史に泥を塗る...」とか言われて、内親王殿下が小室氏と結婚することに反対する声が大きくなってしまう。小室氏が本当に結婚を望んでいるとすれば、まぁ彼の為すことはことごとく裏目というか、矢張り「持っていない」というべきか。

 

さて、一部の保守(を自任する)の方々が懸念するところのひとつは、小室氏なりその母上なりが将来的に、天皇陛下外戚になる可能性がある、という点であろう。また皇室のあり方についての議論の行く末によっては小室氏が、天皇陛下の父になることもあり得るし、将来的には諡号を奉られる可能性もある。少なくとも、天皇位を継がなかった父王に、諡号を奉ろうとした天皇もいたのである(実現できなかったけれども)。

 

まぁ、でも、126代続く天皇家の歴史にあっては、色んなことがあって、不幸な結婚も外戚の弊害も、反動親政政治も、この国の歴史は様々な経験を有している。中には道鏡のように「皇位を簒奪しようと目論んだ」とされる登場人物までいるのだ。しかるに現代において、よもや小室氏が皇位を簒奪しようと考えても、その実現の可能性はウィルスほどの大きさにも及ぶまい。だからあまり心配するほどのことではないのかもしれない。

 

で結局、一部の保守(を自任する)の方々にとっては、「内親王殿下には一刻も早くご結婚、臣籍降下あそばされた後で皇室の存続に関する議論が結論を見る」のが最も都合の良い結論である、という逆説がこの話題のオチ。

 

そうそう、小室氏は文書の中で、当初相手方から「返してもらうつもりはなかった」と言われたことを根拠にしているけれど、それなら母上も同時期に「清算」の意思を示しているのだから、イコールコンディションではないだろうか?と思うのは筆者だけではあるまい。内容的にもちょっと詰めが甘いような気がするぞ、と。